こんにちは。長い(かもしれない)人生を幸せに生きるのにきっと役立つ知識や情報を伝えたい!という暑苦しい思いで、参加型勉強会「ふじさわ終活カフェ」を主宰しているナナです。
去る2023年7月9日に開催した第9回で取り上げたのは、デジタル終活。略してデジカツ。自分自身の終活でも最も面倒くさく、棚卸しが大変で、一部はもう放置しちゃって(デジタル写真の整理とか。いいじゃん、どうでもいい写真が山のようにあったって……人はごみでは死なないっ)、情報のアップデートがしょっちゅう必要な(やめちゃったサブスク情報の消去とか)、あのデジカツです。
同じ思いの方は少なくないようで。「もはや、あきらめの心境」「デジタルに強い息子がいるから、きっと何とかしてくれる」「パスワードは複雑なものをグーグルさんに作ってもらって、覚えてもらっている。そもそもどうやったら『複雑なパスワード』を見ることができるのか、どこに保存されているのかも知らない」など、参加者からは21世紀に生きるオトナとは思えない発言が続々と。
そうだよね、私たち、デジタルのユーザーではあるけれど専門家ではないもんね。そんな一般市民は最低限、何をしておくといいの? 何はしなくても大丈夫? 落とし穴は? …という観点から、一般市民で元記者のナナがいろいろ調べて、聞いて、学んで、まとめた内容をシェアします!
デジタル終活は「生前整理」の一つ
デジタル終活とは、「自分の死後、『デジタル遺品』となるものについて、生前に整理しておくこと」です。要するに生前整理なのですね。ですから、進める手順は一般的な生前整理と同様に、以下の流れとなります。
- 必要品・不用品を仕分け、不用品を捨てる
- 思い出の品を整理
- 貴重品はまとめておく
- 定期的に見直す
そしてデジタル遺品とは、ざっくり分類しつつお示しすると、以下の通りになります。
デジモノ好きな私は、タブレットやらスマホやらキンドルやらコボやらクロームブックやらスマートウオッチやらICレコーダーやらコンデジやらミラーレスやら…とにかくいろいろなデジタル機器が、既に遺物状態となって部屋にあります。引っ越しのたびに、意を決して処分してきたつもりですが、気が付くとまた、いろいろと。
でもまあ、そういうのはまあ、放っておいても大丈夫な遺品ですよね。困るのは、なんといっても「お金がらみの遺品」です。
「お金がらみの遺品」への手がかりを遺そう
国民生活センターの「見守り新鮮情報」に、こんな事例が載っていました。
「先日、父が亡くなりました。父が契約していた通販サイトの有料会員を解約したいのですが、IDやパスワードが分からないので、会員ページにログインできず、手続きが進みません」。
「亡くなった夫が利用していた決済アプリの残高が10万円あるらしいことがわかりました。でも、夫のスマートフォンのロックが解除できないので、詳細が確認できません」。
上の参考リンクにあるように、デジタル遺品がやっかいなのは、それが「デジタル環境を通してしか実態がつかめない遺品」だから。なので、最低限、「実態をつかむ手がかり」を遺しておくと吉、だと思います。
まずやるべきは、スマホのロック解除パスワードを安全に遺すこと
そのための方法として、「デジタル遺品を考える会」代表で専門ライターの古田雄介さんが各所で発信していらっしゃるのが、「スマホのロック解除パスワード(スペアキー)を遺す」ことです。
確かに、スマホやパソコンといったデジタル機器を使って管理していた情報なら、その機器にアクセスできさえすれば情報にたどりつけますものね。特にスマホは、「アプリ」という形で本人の「デジタル活動」がホーム画面で見える化されていますから、手がかりとしての有用性が特に高いと言えそうです!
もちろんパソコンだって、パスワードが分かっている方がいい。ただ、パソコンは、ロック解除を引き受けてくれる専門業者が簡単に見つかります。お金で解決できるんです(相場は2万円くらいかな?)。ところがスマホの場合、パスワードを何度か間違えると中の情報が消えてしまう(初期化される)仕組みになっています。パソコンよりも格段に紛失したり盗まれたりするリスクが高いので、そういうセキュリティー設計がなされているんです。
まあ、初期化されても、AppleIDかGoogleアカウントとパスワードがわかっていれば復元できるんですけど(機種変更時と同じ要領で)。…それが分からないと本当にお手上げになります。
スマホのスペアキーをどう遺す?
スマホのロック解除パスワードの「安全な遺し方」として、古田さんが勧めるのが「スクラッチカード化」。スマホのパスワードや重要サービスのアカウント情報などを紙に書き出し、パスワード部分を修正テープでマスキングして、通帳や実印などの重要なものと一緒に置いておく、という方法です。
安心・安全なスクラッチカード化。セロハンテープを使って慎重にはがそう
これ、私、やってみたんです。が、修正テープを十円玉でごしごし擦り取ると、下のパスワードも一緒に擦り取られてしまう。名刺とか丈夫なつるつるした紙でやってみても、一緒に擦り取られちゃう…。
…という失敗談を終活カフェで話したら、参加者のTさんが「それ、セロハンテープ使いました?」と。
セ、セロハンテープ?
Tさん曰く、マスキング部分の上にセロハンテープを貼り、上からやさしくコインでこすって、セロハンテープをそっとはがすとマスキングがきれいに取れると。おお、伊東家の裏ワザのようだ!(本当にありそうな気がするー!)
で、やってみました。テープを貼ってやさしくこすり、そっとはがすと…おお、修正テープがうっすら剥がれました! でもまだ、下の文字は読めません。もう1回、テープを貼ってこすってはがすと…もうちょっと剥がれた! でも、まだ読めないっ。もう1回、もう1回……私の場合、11回やってようやく下の文字が読めるレベルにまではがせました。そっと擦りすぎ??
ナナのおすすめは「封筒で自宅に遺す」
別の方法として、エンディングメッセージ普及協会理事長の安田まゆみさんに教えていただいたのが、「封筒に入れて遺す」方法。安田さんは「銀行のATMの暗証番号を親に教えてもらう方法」として、こんなお話しをしてくださいました。
「いきなり『暗証番号を教えて』と言うと親御さんも警戒するでしょう? なので『暗証番号を、今知りたいというわけではないの。もしお父さんに万一のことがあった時、暗証番号がわからなくて、お金がおろせなくなることが心配なの。だから、暗証番号を紙に書いて、封筒に入れて、しっかり封をして仏壇の引き出しにしまっておいてくれない? 万一のことがない限り、決して開けたりはしないから』と言って頼んでみるといいわよ。たいてい、やってくださるから。『紙に書いて遺すなんて、そんな面倒なことをしなくても、暗証番号は何番だよ』と教えてくださったという話もよく聞くわ」
ナルホド! 同じやり方で、スマホのロック解除パスワードも残せそうです。
私のおすすめは、いかにも遺言書っぽいきれいな封筒に入れて、「愛する◎◎さんへ」みたいな表書きを書いて、エンディングノートと一緒に置いておくこと。万一、泥棒が入っても、遺言書は盗みにくいんじゃないかなーと思うんですよね。そして…身内に生前に見られるリスクも減らせるのではないかと。
より安全性を重視するなら、遺言書そのものに付帯事項として記載してしまうとか、銀行の貸金庫に預けるという方法も取れるとは思います。でも、どちらも開けるには相続人全員がそろわないといけないのでなかなか面倒。さらに、「死んでいないけど意識不明の重体」なんていう状況の時には、そもそもアクセスできないんですよね。「生きているうちに友人に連絡してあげたい! ああでも連絡先がっ!」なんて状況に対応しようと思ったら、信頼ベースで封書を遺すのがいいんじゃないかと思います。
秘密はちゃんと隠すのもオトナの終活
テレビドラマを見ていると、夫のスマホに浮気相手からメッセージが入って、それを妻に見られてしまう…なんていうシーンがよくあります。愛人と写っている写真が出てきたり。
なんなんでしょうね、アレ。無防備すぎ。私は声を大にして言いたい。
もし、秘密の恋人がいるなら、
連絡にLINEやgmailは使うな!
写真や動画はシークレットフォルダに隠せ!
秘密のアプリやフォルダはホーム画面に置くな!
LINEのように使えてセキュリティーが高い(画面ロックとか、一定時間後にメッセージが消えるとか)Signalとかのメッセージアプリもあるし、生体認証でしか開けられない(つまり、死後はあけられない)シークレットフォルダとか、電卓アプリにしか見えない(ご丁寧に、普通にタップすると電卓として使える)シークレットフォルダとか、いっぱいあるから。そういうの使おうよ。
もし、人に知られたくない趣味があるなら、
検索履歴はその都度消せ! あるいはシークレットウインドウを使え!
そういう習慣を普段からつけておくことも、オトナのデジタル終活だと思います。
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