こんにちは! 人生最大の優先事項は「幸せであること」な、ナナです。
毎日を幸せに過ごすための秘訣は、気力・体力・好奇心。そこにプラスして、文化的な生活を楽しめる金銭的・精神的・人的なゆとりも欲しい。人を助け助けられて、感謝し感謝されて、笑顔を向け笑顔をもらう。そういう人で私はありたい……。
などと思いつつ日々を暮らす中、「そうだ、これも大事だった!」と改めて気づかされたのが「センス・オブ・ワンダー」です。直訳すれば、わーお、ワンダフル♥と感じるセンス、のこと。同名の書籍の存在をつい先日知り(とてもセンスのいい人が賞賛していた)、読んでみたところ、わーお。
なんで今まで読まなかったんだろう……と大反省&大感動したのでシェアしますね!
『沈黙の春』のレイチェル・カーソンが奏でる美しい叙事詩
『センス・オブ・ワンダー』は、米国の海洋生物学者で作家のレイチェル・カーソン(1907‐1964)が著したエッセイ。本人の死後、遺志を継いで友人たちが刊行した最後の著作となりました。
私にとってのカーソンは、『沈黙の春』(1962)の著者。農薬の過剰使用が環境と生態系に与える悪影響を訴えたこの本は、全米に広がる環境保護運動へとつながったことを、確か現代史の教科書で読みました。
↑最近、新訳が出ました。おしゃれな表紙!
そういう出会いだったこともあり、勝手に「環境活動家」だと思い込んでいたんです。なので、『センス・オブ・ワンダー』についても「環境活動家の本を楽しめるかなあ?」と一抹の疑問がよぎったのですが、
先入観を脇に置いて、ページを開いてみると……
そこには、美しい世界が広がっていました。
世界は美しく、自然は神秘に満ちている
最初の場面は、嵐の夜。
海辺の別荘で過ごすカーソンは、雨の降る暗闇の中、幼い甥っ子のロジャーを連れて海岸へと降りていきます。とどろきわたる波の音、吹き付ける激しい風、顔に体にかかる波しぶき。そんな荒々しい夜の中、
二人は、不思議な喜びに満たされ、笑い声をあげていました──。
カーソンはロジャーが別荘に遊びに来るたび、一緒に海岸や森を「探検」しにいきます。花崗岩にふちどられた海岸線からトウヒのそびえる丘へと通ずる道の、足元に敷き詰められた植物のじゅうたん。そこで出会うカニや貝、草花、虫、鳥などの生き物の美しさと不思議さに驚き、感激するロジャーの様子を見ながら、カーソンは願います。
世界中の子どもに、生涯消えることのない「センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見張る感性」を授けてください、と。
「センス・オブ・ワンダー」を持ち続けることは難しい
自然の美しさ、不思議さ、神々しさ。それを感じ取る受容体を、子どもの私たちは備えていました。
見る間に姿を変えていく、空の雲の形。
歩いても歩いてもたどりつけない、虹の橋のたもと。
繰り返し打ち寄せて砕ける、一つとして同じ形のない波がしら。
風を得て、鋭く立ち上がる炎。
私は子どものころ、そんな光景に息をのんで惹きつけられ、不思議な喜びが溢れてくる経験をしています。
でもカーソンも指摘しているように、私たちの多くは大人になる前に、そんな感性をにぶらせてしまいます。確かに、今の私は、子どものころのように何時間も飽きずに空を見上げてはいられません。
どうしてできなくなってしまったんだろう?
どうして、こんな気持ちを忘れてしまっていたのだろう?
……そう、忘れてしまっていたことすら、忘れてしまっていたのです。
1日5分でいい、美と不思議を味わう感性を磨き続けよう
でも、今『センス・オブ・ワンダー』を読んで、空に目をやると、
子どもの頃のように時を忘れて……とはいきませんが、
それでも、数分は、
空の美しさに息をのみ、飽かずに眺め、やがて、温かな「幸せで満ち足りた気持ち」で胸を満たすことができます。
会社員時代。
高いビルが立ち並ぶオフィス街の中でさえ、
いつでも見上げれば空が見えることを、心のよりどころにしていたことがありました。
「大丈夫、ここにも空はある」。
明けない夜はない、止まない雨はない。
そんなふうに、空を、自然を感じることで自分を回復させていたんです。
カーソンは、こう記しています。
地球の美しさと神秘を感じとれる人は、科学者であろうとなかろうと、人生に飽きて疲れたり、孤独にさいなまれることはけっしてないでしょう。たとえ生活のなかで苦しみや心配ごとにであったとしても、かならずや、内面的な満足感と、生きていることへの新たなよろこびへ通ずる小道を見つけだすことができると信じます。
出典:レイチェル・カーソン著、上遠恵子訳『センス・オブ・ワンダー』(新潮社、文庫版、2021)
山あり谷ありの人生も後半ともなれば、息が切れ、くじけそうになることもあるでしょう。自分一人ではとても乗り越えられそうにない、途方もない「喪失」の悲しみに見舞われることも、きっとあります。
そんなときに、きっと助けになるのが、自然の癒しの力を受け取る感性(センス)。
自然がくりかえすリフレイン──夜の次に朝がきて、冬が去れば春になるという確かさ──のなかには、かぎりなくわたしたちをいやしてくれるなにかがあるのです。
出典:レイチェル・カーソン著、上遠恵子訳『センス・オブ・ワンダー』(新潮社、文庫版、2021)
1日5分でいい、空を見上げ、風に当たろう。山を見て、街路樹を眺めて、公園をはだしで歩こう。自然に触れて、子どものころの感性を取り戻し、磨いていこう。
それがきっと、未来の自分への大切な贈り物になるのだから。