【国が推奨】人生後半こそ運動のメリット大! 「多要素な運動」で身体機能を高めよう【身体活動・運動ガイド2023】

健康情報

こんにちは。元・医療記者で健康マスター普及認定講師の北村ナナです。今年(2024年)は「健康日本21」(国民の健康増進を総合的に推進する基本方針)の改正年。4月から始まる新方針「健康日本21(第三次)」に合わせて、国民向けの様々な健康づくりガイドラインが改訂されています。

その一つが、先日紹介した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」ですが、もう一つ、運動に関するガイドラインも改訂されました。

それが、「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」! 早速見ていきましょう♪

キーワードは「今より少しでも」「できるものから」

「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(以下、運動ガイド)の特徴は、次の4つにまとめられます。

【1】定量的な推奨事項に加え、定性的な推奨事項も設定

【2】筋トレ(筋肉トレーニング)を推奨

【3】「座位行動」を減らすよう推奨

【4】高齢者に「多要素運動」を推奨

【1】定量的な推奨事項に加え、定性的な推奨事項も設定

運動に関するガイドラインでよく見るのが、「1日1 万歩」とか、「週3回30分」といった数値目標。数字で目標値が示されていると、「あと〇歩がんばろう」とやる気が出ますし、目標に到達できれば「やった、できた!」と達成感が得られます。

一方で、その目標値が自分にとってあまりに高すぎると、「どうせ無理」「やっても無駄」と思ってしまいがち。みんながみんな、同じように、しゃきしゃき動けるわけじゃないんです。

特に人生も後半になると、いろんな病気やけが、痛み、後遺症、病気の治療の影響などで、「毎日〇歩、がんばりましょう!」と言われても「無理~~!」な状況が増えてきます。

そうした状況も踏まえてか、今回の運動ガイドでは、数値目標といった「定量的な推奨事項」に加えて「定性的な推奨事項」も取り入れています。

定性的とは、「1日〇分」みたいに数値化ができない点に注目して物事をとらえること。「個人差等を踏まえ、強度や量を調整し、可能なものから取り組む」と。おお、インクルーシブ! 「誰一人、取り残さない(leave no one behind)」推奨事項ですね、素敵❤

運動ガイドに掲載されている「推奨事項一覧」(下図)にも、「全体の方向性」として、「強度や量を自分に合わせて調整しよう」「できることからやろう」「今より少しでも体を動かそう」といったことが書かれています。私みたいなへなちょこには、とってもうれしくありがたい、実施可能な運動ガイドです。

【2】筋トレ(筋肉トレーニング)を推奨

改訂前のガイドライン(『健康づくりのための身体活動基準2013』)には、「身体活動に安全に取り組むための留意事項」として、「身体活動(生活活動・運動)の内容は、血圧上昇が小さく、エネルギー消費量が大きく、かつ傷害や事故の危険性が低い有酸素性運動が望ましい」と書かれていました。安全性を考えれば、有酸素>>筋トレ、というわけです。

また、生活習慣病を予防するという点でも、有酸素性運動には豊富なエビデンス(科学的根拠)がありました。医学界のガイドラインでも、生活習慣病を予防・改善する運動の種類として有酸素性運動が推奨されていたのです。

しかし、この10年の間に、筋トレの健康効果についてのエビデンスがかなり積み上がってきました。今回の運動ガイドでは、エビデンスに基づく筋トレの健康効果として、以下のものが列挙されています。

  • 筋力の改善
  • 身体機能の改善
  • 骨密度の改善
  • 転倒・骨折リスクの低減(高齢者)
  • 低い総死亡リスク
  • 低い心血管疾患リスク
  • 低い全がん発症リスク
  • 低い糖尿病発症リスク
  • 低い肺がん発症リスク

運動器(筋肉や骨)への効果、つまり筋力とか身体機能がアップして転倒や骨折をしにくくなるというのは予想の範囲内でしたが、心臓病や脳卒中などの心血管疾患や糖尿病、さらにはがんにまで予防効果が期待できるなんて、筋トレってけっこう万能感高いですね!

【3】「座位行動」を減らすよう推奨

「座位行動」とは耳慣れない言葉ですが、要するに「座りっぱなし」という意味です。今回の運動ガイドでは、次のように定義されています。

座位や臥位の状態で行われる、エネルギー消費が 1.5 メッツ6以下の全ての覚醒中の行動(例えば、デスクワークをすることや、座ったり寝ころんだ状態でテレビやスマートフォンを見ること)

こんな概念図が出ていました。

座ったり、寝ころんだりしながら「眠る以外の何かをしている」状態を、座位行動と呼ぶんですね。こうしてブログを書いている私も、絶賛、座位行動中……。

で、この座位時間が長くなればなるほど、死亡リスクが増加することが、34件のコホート研究のメタ解析から明らかになったとのこと(Eur J Epidemiol. 2018 Sep;33(9):811-829. )。座っている時間が1日6~8時間を超えると、総死亡リスクと心血管疾患による死亡リスクが高まるんだって、きゃー! 事務職のヒト、みんなヤバいじゃん!

でも、望みというか救いはあって、

長時間の座位行動をできる限り頻繁に(例えば、30分ごとに)中断(ブレイク)することが、食後血糖値や中性脂肪、インスリン抵抗性などの心血管代謝疾患のリスク低下に重要であることも報告されています。

(出典:『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』)

……とのこと。私は1時間座りっぱなしだと「立ち上がってください」と警告するスマートウォッチの機能をオンにしているのだけれど、30分ごとに警告させるようにしようかな。

【4】高齢者に「多要素運動」を推奨

「多要素運動」というのも聞きなれない言葉ですよね。これは、ダンスや体操のように、多様で複雑な動きを伴う運動のこと。持久力、筋力、バランス感覚、柔軟性など、複数の体力要素を高めることができます。マルチコンポーネント運動、略してマルチコ運動、と言ったりします。ワカチコじゃなくてマルチコ。この言い方、はやらなかったですよね(苦笑)。知名度では「ロコトレ」といい勝負かも!?

それはさておき、多要素運動は、もちろん若い人にもいい効果はあるでしょうけれど、特に効果が高いのが高齢者。多要素な運動を主体とした運動プログラムを週3回受けた高齢者では、転倒リスクが12~32%、転倒・骨折のリスクが15~66%低くなったそうです。すごい効果!

歳をとってからの骨折は、身体機能や認知機能が衰える引き金にもなりますよね。私、「こんな衰え方は避けたいなあ……」というものの一つが、「骨折→入院→車椅子→寝たきり」というルート。もし防げるなら、ぜひとも防ぎたい。多要素運動、がんばろうっ!

この多要素運動としてお勧めしたいのが、私の推し・グロングの前田さんのトレーニング動画。低強度でリズミカルに動けて、最後の方は私の実力的に厳しいところもあるけれど、10分動いた後は「がんばった、自分なりにできたー!」という気持ちになれます。

【久しぶりに運動する方向け】まずはこれから!一緒に全身運動【10分間】

人生後半は「少しでも動く」ことが大事

今回の運動ガイドで、高齢者(私はまだ65歳にはなっていませんが、自覚的には高齢者の範疇かなあ。へなちょこだし……)に推奨されている運動・身体活動は次の通りです。

1日40分以上、3メッツ以上の身体活動をする(歩行なら、1日6000歩以上)

週3日以上、多要素な運動をする

週2~3日、筋トレをする

座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように注意する

私がすごいなあ、と思うのは、人生の後半になっても運動による健康効果が得られること。それどころか、むしろ効果の大きさとしては、年を取ってからの方が大きいことです。

例えば、勉強の効果だと、やっぱり若いうちの方が記憶力はいいし体力も集中力も高いから、同じ時間だけ勉強した場合の効果は若い方が高いと思うんですよね。

もちろん運動も、例えば「筋肉を増大させる」効果なら、ベースの筋肉量が多く成長ホルモンもバンバン出ている若い人の方が高いと思います。

でも、「総死亡リスクを減らす」効果は、高齢者の方が上! 身体活動をほとんど行わない高齢者と比べ、週15メッツの身体活動をしている高齢者は、総死亡や心血管疾患死亡のリスクが約30%も低くなるんです。

し・か・も!

推奨値(週15メッツ・時)を達成しないような少しの身体活動を行った場合でも、身体活動をほとんど行わない場合と比較すると死亡率は低下します。むしろ、身体活動の少ない人ほど、少しの身体活動で大きな健康増進効果が期待できます。

(出典:『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』)

これまで運動不足だった人ほどメリット大! いや、マジで、やらない理由がない……。

さらには、有酸素性運動は認知機能の低下を予防するというエビデンスもあるとか。これ大事、めちゃ大事。

「認知症、怖いねえ、なりたくないねえ」

なんていいながら寝転がってテレビやスマホを見ているくらいなら、

よっこいしょっと立ち上がって、近所を散歩するのが大吉。毎日、こつこつ、ちょこちょこ、がんばりましょうねーー!

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